相手は変えられない、変えられるのは自分だけ。

●問題が生じた時の対人関係から学ぶ。
弁証法的行動療法(DBT)という心理療法のスキルの一つに対人関係スキルがあります。そのスキルの中に、人とのやり取りで問題が生じた時に、自己点検を行う方法があります。
人間関係において全く問題が生じないという事はある意味不自然でもあり、大なり小なり人間関係において問題を感じるのは必然とも言えます。
しかし、問題が生じる頻度が多く、生きることの苦しみになっている場合は必然だけでは片づけられなくなってきます。ましてや、なぜ問題が生じるのかわからない場合などは、底の見えない苦しみの中で自分を責めたり、時には他者を、社会さえも恨むようになるケースも存在します。
問題が生じることは苦しみでもあり、出来れば避けたいことですが、そこから得られる事や学べる事もたくさんあります。しかし、一人で考えていてもなかなか気づけないことも多く、特に相手に対する恨みや不満の感情がある場合はなおさらです。そこで、相手の事はひとまず脇へ置いて考えるにあたって、自分の側の問題となり得る事をリスト化しておくことでチェックしやすくなります。それを積み重ねていくことで、自分が対人関係でぎくしゃくするときのパターンが見えてきます。それが客観視へとつながり、同じパターンに陥りそうになっていることに気づくことで、人間関係が悪化するのを未然に防ぐことが出来るようになってくるのです。
●自己チェックを行うにあたり知っておいた方がよいこと。
自己チェックリストの内容をご紹介する前に、知っておいた方が良い事を解説したいと思います。完璧に知る必要はありませんが、知っているのと知らないのとでは効果に差が出てくるからです。それでは何を知っておくと良いのでしょうか?一言で言ってしまうと、「自分を知る」ということです。自分は何を求めているのか?どうしたいのか?自分はどのように感じているのか?これらのことをある程度は自覚出来ることが自己点検するにあたって有効な要素となるのです。
そのくらいわかるよと思われるかもしれませんが、改めて考えるとよくわからなかったり、あやふやだったりすることが実は多いのです。特にアダルトチルドレンの方のように、子供の頃に親の顔色を伺うような環境で育った場合などはなおさらのことです。以下に自分を知ることの大切さを解説したブログをリンクしておきますので、よろしかったらご覧ください。
●対人関係で問題が生じた時の自己チェックリストをご紹介します。
さて、それでは具体的な自己チェックリストをご紹介していきたいと思います。
①自分の望んでいること(目標)は明確でしたか?
・自分が望んでいること(相手に求めるために)、または望んでいないこと(Noと言うために)を分かっていたか?
・自分は人に対してどのように接したいか、あるいは接してもらいたいか分かっていたか?(対人関係における価値観)
②相手を嫌悪させるようなやり方を使わなかったですか?
・相手を軽視する。見下す。拒否する。脅かす。非難する。けなす。無視する、罪悪感を持たせる。話をそらす。自分の話にすり替える。などのやり方を使わなかったか?
③消極的な態度を取っていませんでしたか?
・避ける、引きこもる、拒絶するなどの態度を取らなかったか?
④相手との障害となる要因はありましたか?
・怒りや恐怖、嫉妬心や対抗心など圧倒されるような感情が生じなかったか?
・恐れや不安(もし~になったらどうしよう)の感情に囚われなかったか?
・好ましくない関係(相手が攻撃的・支配的・依存的な態度を取るような人物の場合など)ではなかったか?
・不適応的な信念(人に求めることは身勝手な行為である、問題が生じた時は私に非がある、相手の怒りに耐えられない、私には交渉する力が無い、など)に囚われなかったか?
⑤相手に求めるレベルは適切でしたか?(相手との関係性による)
・要求が強すぎたり、逆に妥協し過ぎたりしなかったか?
⑥アサーティブ的な問題はありませんでしたか?
・事実を見ずに自分の価値観だけで判断しなかったか?
・相手の領域に足を踏み入れなかったか?「私」が主語でなく「あなた」が主語になっていなかったか?
・自分が望んでいる事を具体性を持って説明したか?
⑦相手の話を聞くのを妨げた要素はありますか?
・相手の考えを読もうとしなかったか?
・自分の言いたいことに意識が向いて相手が話している事を聞き逃さなかったか?
・自分の関心のあることだけを聞こうとしていなかったか?
・相手の考えを理解する事よりも、自分の価値観で判断していなかったか?
・相手が話をしているにもかかわらず空想に耽っていなかったか?
・相手を理解する事よりも、アドバイスしようとしていなかったか?
・議論する姿勢を取っていなかったか?
・自分のことを言われる事に対して過剰なまでに、拒否反応を示さなかったか?
・自分が話題にしたくないことを言われて話を変えようとしなかったか?
・相手の話を理解していないにもかかわらず、安易に同意や共感の姿勢を示さなかったか?
⑧相手が自分の話に耳を傾けてくれない時の対応スキルを使いましたか?
・相手の話の妥当性を考慮した上で自分の考えの妥当性も検討してみたか?
・相手が自分の話の真意を理解していない時に、自分の望みを繰り返し伝えたか?その時に相手の話に対して反論しなかったか?
・相手の真意を測る努力をしたか?真意が測れない時に繰り返し尋ねてみたか?
⑨話を白黒つけようとしたり、結論をすぐに出そうとしなかったか?
・話をぼやかしたり、答えをあいまいな感じで先に延ばすことも対立を招かないためには有効なスキル。
⑩リラックスすることを意識したか?
・対立するときは交換神経が働いて身体が緊張しているケースが多い。マインドフルネスのゆったりした呼吸法なども有効なリラックス法である。
⑪妥協案を探してみたか?
・意見が対立した時に大切なことは、落としどころを探す、妥協案を探し求めること。
●対人交流の改善に大切なのは続けること。トレーニングと同じです。
いかがでしょう、ここに挙げたチェック項目は対人交流で問題となり得る要素、そして友好的な交流のためのスキルです。人とのやり取りで問題が生じた時や、気になった時にこのチェックリストを活用して検証してみると、自分の対人交流パターンが見えてきます。そして改善点を見つけて、それを実際の対人交流で活かしていくことで、人間関係が楽に感じられてくることでしょう。トレーニングと同様に日々、継続していくことで新しい生き方が身についてくるのです。
●カウンセリングでは、対人交流に影響する心理的な根本的要因まで掘り下げて改善を図っていきます。
このチェックリストにある自分自身の感情や行動は、成育歴における家庭影響や学校での体験が大きく影響していることが多いのです。カウンセリングでその部分を丁寧に掘り下げて見ていくことで、人間関係で生じる問題に対して根本的な解決を図ることへとつながっていきます。人間関係が上手く運ばずにストレスとなって苦しんでいる方や、カウンセリングなどに関心を抱かれた方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にウェッピーカウンセリングルーム日野・東京宛までお問い合わせいただけたらと存じます。あなたが苦しい人間関係から解放されて、より良い人生を歩いていくための一助になることができましたら幸いです。