友好的な対人交流の妨げとなるものとは?

感情、欲求、まずは自分を知る所から全ては始まる。

人との交流で妨げとなるもののイメージ

●なぜ、自分を知ることが必要なのでしょう?

 人間は、自分を知っているようで実は知らないことがとても多いのです。表面的な事は分かっているかもしれません。例えば、ちょっと短気かな、どちらかというと心配性な方かな、あるいはマイペースな方、もしくは人に気を使う方かも、とか。でも、その裏には過去の記憶や親から受け継いだ信念などが複雑に絡み合って影響している事がとても多いのです。

 例えば、支配的な親の元で育った場合など、子供は自分は「こうしたい」などの考えを持っていたとしても否定されてしまう事が考えられます。それが積み重なり抑圧した感情が自分でも知らないうちに「恨み、怒り」の感情として深い部分に植え付けられてしまっているケースがあります。すると、否定されることに対して感情が過敏に反応して、自分のことを否定した相手に対する怒りが増幅することが考えられます。あたかも親に否定され続けた時の感情がフラッシュバックされるように相手に対して再現されるのです。心理学ではこの現象を自分の親を相手に対して「転移」していると表現します。

 このように相手に対して生じた自分の感情の大元にあるものを知っているだけで、例え否定されて嫌な気分になったとしても必要以上に感情をエスカレートさせることなく相手と向き合う事が可能になります。

●円滑な対人関係を妨げるもの。

 いかがでしょう、対人交流において自分をより知ることの意義をご理解いただけましたでしょうか。次に、円滑な対人関係を妨げる要因となるのものをいくつかご紹介したいと思います。

①攻撃的な性質。

例えば、養育者が家族を怒りで支配していたような環境で育つと、怒りで相手をコントロールすることを無意識のうちに獲得してしまう場合があります。コントロールの方法として、相手を下に見て、軽蔑したり、突き放したり、脅かしたり、あるいは罪悪感を持つように仕向けたりすることが考えられます。いずれにしても相手と良好な関係を結ぶのは難しくなります。

②受動的な性質。

例えば、家族の中で対立した時に、自分の感情を抑圧することや、その場を逃れることで対立を回避することを学習した場合は、どうなるでしょうか。対立を回避したつもりでも相手に対してはネガティブな感情が残り、それが態度に現れているかもしれません。そのストレスは自分自身にも跳ね返ってきます。この場合もやはり相手と良好な関係を築くのは難しくなるでしょう。例え築けているつもりでも、無理は続かずにやがて爆発するか破綻してしまう可能性があります。

③圧倒されるような感情。

例えば、養育者の情緒が安定せずに、いきなり豹変してキレるような(ヒステリー)性格の持ち主であったり、あるいは怒鳴るなどの心理的ストレスを子供に与え続けた場合は、感情を爆発させることでストレスから開始することを学習してしまうケースもあります。このような状態は解離性遁走の状態にも似ていて、周囲からするとおとなしく見えていた人が、いきなり別人のようにキレて怒鳴り散らしているように感じる事もあるでしょう。本人もなぜあんなにキレてしまったのかわからずに、自分を責めたり人と関わること自体に不安感を覚えたりと、やはり良好な人間関係の継続には大きな障壁となり得ます。

④自分のニーズがよくわからない。

自分自身が何を求めているのか?どうしたいのかがわからない場合もまた、対人交流はスムーズに運びません。お互いにフラストレーションが溜まることにもなり兼ねません。養育者が驚異的な存在であったり、養育者に抑圧を強いられた環境で育ったりすると、自分が何を求めているのかがわからなくなります。また、養育者が過保護・過干渉であった場合も、自分で考える機会が与えられずに人任せのような性格が身について、どうしたいのか聞かれても答えられない、というようなケースも十分考えられます。

⑤恐れ。

恐れが強い場合はどうでしょうか。こんなことを言ったら相手がどう思うだろうか?気分を悪くするのではないだろうか?嫌われてしまわないだろうか?自分の評価が下がるのではないか?などとの考えが浮かぶのではないでしょうか。そのような考えで人と交流しても対等な交流とはならず、相手に支配されてしまうか、依存してしまうかの不健康な関係に陥ってしまいます。この様な関係は精神的にも悪影響を及ぼしかねません。

●カウンセリングでは、「自分を知る」という作業に、その人のペースで丁寧に取り組んで参ります。

 上記に挙げた対人交流の妨げとなり得る要素に関しても、まずは自分を知らなくては気づくことが出来ません。カウンセリングでは来談者中心療法交流分析弁証法的行動療法フォーカシング療法マインドフルネス療法などを通して、丁寧に自分自身と向き合っていただいています。自分自身と向き合うという事はある意味、苦しみも伴う作業ではありますが、カウンセラーが寄り添いながら、無理のないペースでその人に合った心理療法をクライエントの方と相談しながら進めて参ります。

 このようにして、対人交流を円滑に進めるためには、妨げとなっている自分なりの要素を発見していく事がとても重要で、それが具体的な対処法へとつながっていくのです。また、自分の特性を知るだけでも対人関係の改善に役立ちます。

●対人関係などでお悩みの方へ。お一人で悩まずにお気軽にご相談いただけましたら幸いです。

 ここに掲げた情報が皆様の対人交流に関して、何かのヒントになれましたら幸いです。また、人間関係でお悩みをお持ちの方や生きづらさなどを感じている方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談いただければと存じます。皆様方がより良い人生を歩まれる一助になれることを願って。