不安や怒り、苦しい感情を和らげるーポリヴェーガル理論とは?

緑の自律神経(腹側迷走神経)を活用する。

ポリヴェーガル理論のイメージイラスト

●不安、怒り、苦しみ。その感情はどこから生まれるのか?

  人間には本能があります。その代表的なのものが生存本能、生きていくための本能です。その中には自分を守るための本能、防衛本能も存在します。不安、怒りなどの感情も危険な存在から自らを守るために必要な感情なのです。つまり、これらの感情は本能から生じると言っても過言ではないのです。

●アダルトチルドレンなどの方は防衛本能がとても強い。なぜなら・・

  アダルトチルドレンの方のように、育ってきた家庭環境が緊張感に包まれている状態では、無意識のうちに常に自分を守ることを考えています。本来であれば、自分を守ってくれるはずの親、そして安心の場であるはずの家の中が脅威の対象なのですから当然です。ですから、おのずと自分を守るための本能、つまり防衛本能がとても強く、肥大化されていくのです。それに伴い、不安感、恐れ、そして怒りの感情が育て上げられるのです。

●その感情は一生を支配することになる。

 そして、幼少期に身につけた強大な負の感情(自分を苦しめるという意味で)は、その後の人生を支配していきます。その支配は、人間関係の中で一番強く生じます。人間関係は生きていく上で切っても切れないのですから、とても強い苦しみが生じることになります。その苦しみから逃れるために、アルコールや薬物、あるいは摂食、性的な行為などへ依存していく方も珍しくはありません。依存症はある意味、2次的な障害なのです。

●アダルトチルドレンの方の苦しみは一般には理解されづらい。

 日本の文化には、自責と言う考えが強く存在します。つまり、「人のせいにするな、自分の問題だ」と言う考えです。ですから、いじめ被害者に関してもいじめられる側にも問題がある、などと言う人もいるくらいです。それはいじめという行為を肯定している事になるのではないでしょうか。

  このようにアダルトチルドレンの方が親の不適切な養育の影響で苦しむことになって、それを誰かに訴えても、「親だって一生懸命にあなたを育ててきた、あなたも親のおかげで成長出来たのだろう」、などと言われて話す事をあきらめたり、さらに絶望へと追い込まれたりする事にもなり兼ねないのです。

●では、解決法はないのか?

 解決法はあります。一人で苦しまずに、専門的な知識と経験を積んだ人間と一緒に問題に取り組むことです。その代表的なものがカウンセリングです。向精神薬などで改善しようと思っても一時は苦しみが和らぐことはあっても、身体が慣れていくとさらに強い薬や量を求めることになりかねません。アダルトチルドレンとして受けた心の傷は薬では取り除けないからです。

 ですから、カウンセリングのように心理面にアプローチしていく心理療法が効果を発揮します。認知行動療法弁証的行動療法をはじめとして交流分析再決断療法スキーマ療法フォーカシングなど理性や感情の両面に働きかけていく心理療法をクライエントの方と相談しながら進めて参ります。

●自律神経に働きかけていくポリヴェーガル理論。

 上記に掲げた心理療法は、思考や感情に働きかけていく心理療法です。それに対してポリヴェーガル理論は身体の自律神経に働きかけていくアプローチです。

 自律神経は、攻撃された時や緊張が走った時などに活性化される「交感神経」と、リラックスモードの時に活性化する「副交感神経」の二つに大きく大別されてきました。しかし近年では副交感神経も二つ存在することが分かってきたのです。

●自律神経をブレンドする。

 それでは、二つの副交感神経とはどのようなものなのでしょうか?一つはリラックスするための「腹側迷走神経」です。そしてもう一つは、活動にブレーキをかける「背側迷走神経」です。人間はストレスがあまりに強いと、固まって動けなくなります。交感神経や背側迷走神経が活動している状態はストレスがかかっている状態です。そのストレスを和らげてあげるために腹側迷走神経を活用してあげましょうという考えがポリヴェーガル理論です。色に例えると分かりやすく、交感神経を赤(R)、腹側迷走神経を緑(G)、背側迷走神経を青(B)とします。RやBを減らすのではなく、Gをブレンドしてあげるというイメージです。ブレンドするとRもBもまろやか(グラデーション)になるのがイメージできるのではないでしょうか。

●身体(自律神経)に働きかける。

 自律神経に働きかけるのに一番いい方法は身体に働きかけることです。緑の腹側迷走神経に働きかけるには、自分が気持ちいいと感じる事、音楽でも運動でも瞑想でも自分が心地よいと感じる事を自分にしてあげることです。リラックスしなくては、などと考えると、さらに交感神経が刺激されることにもなり兼ねないからです。 

 実はこのリラックスした感じは、刺激が和らいでいる状態なので記憶に残りずらいのです。どちらかというとストレスがかかっている状態の方が記憶に残りやすいのです。ですから、リラックスした状態の時間を少し意識して増やすことで身体が自然と覚えていくとブレンドしやすくなるのではないでしょうか。

●一緒に取り組んでいきましょう。

 緑の自律神経を活性化させるのにとても役立つマインドフルネス療法など、その人に適した心理療法をクライエントの方と相談しながら提供させていただいています。どのような心理療法もそうですが、本やYouTubeなどで学んで一人で取り組むには限界があり、また下手をすると過去がフラッシュバックすることもあり危険な面もあります。学んで知識を得ることは決してマイナスではありませんが、心理療法は経験のある専門家と一緒に取り組むことで効果を発揮します。また、安全でもあります。

 ここに挙げた心理療法やカウンセリングに関心のある方、または生きづらさなどを感じている方がいらっしゃいましたら、お気軽にウェッピーカウンセリングルーム日野・東京までご連絡いただけましたら幸いです。

 あなたの心が少しでも癒されることを願って。