人間関係が苦手な方へ−関係構築スキルをご存じでしょうか?

人間は集団で生きる「社会的動物」

●社会的動物とは?

 社会的動物とは集団を形成(社会)して、その中で他者と関係性を持ちながら、自分の居場所を作って生活を営む動物の事を指します。 人間もまさしく社会的動物であり、家族・職場・学校・友人・地域などの社会において、お互いに交流しながら生活を営んでいます。

 そして社会的動物に備わった本能として、周囲の人達と友好的な関係を築こうとする欲求があります。この欲求を満たすためには、人間関係を上手に築くスキルが求められるのです。そのスキルが弱いと、人間関係がぎくしゃくして、自分の居場所を作ることが出来ずに、生きづらさにつながることがあります。人間にとって、健康や経済的な悩みも生存本能と関連してとても大きなものですが、人間関係の悩みはそれを上回るとも言われています。社会になじめないことからメンタルだけでなく身体の健康も壊し、仕事にも支障をきたして経済的に追い込まれることもあり得ます。追い込まれて自ら死を選ぶこともあり得ないとは限りません。社会的動物である人間にとって、人間関係はそれほど大きな問題なのです。

●自分の関係構築タイプを把握してみよう。

 自分が他者と関係を築く時に、どのような傾向があるのかを知っておくことも、より良い対人関係を構築するときのヒントになります。以下に3つの関係構築タイプをご紹介します。

A:期待不認知タイプ

誰かが助けてくれたり、自分の都合に合わせてくれたりすると、その好意を素直に受け取って嬉しい気持ちを表現する力を持っているタイプです。相手から見ると、その姿が嬉しくも感じてその場では良好な関係が築けます。しかし、いつも相手の好意に甘えてばかりだと、図々しい人などと思われて自分の知らないところで関係性が悪くなることもあり得ます。相手からの期待も想像しつつ、好意を受けたらお返しすることを意識することでより豊かな人間関係の構築につながっていくでしょう。

B:期待負荷タイプ

人から何かしてもらったり、自分に合わせてもらったりすることに対して負担に感じやすいタイプの方です。他者の行為に甘えることが苦手で必要以上に他者と距離を置きがちになり、親密な友好関係を築きにくくなります。その根底には、相手が自分にお返しを期待していて、その期待に応えなくては、お返しをしなくてはならない、などの強迫観念の存在があります。律儀で真面目な方にその傾向は見られます。まずは期待に応えようとすることを手放すことから始めて、持ちつ持たれつの軽い気持ちでの関係を意識することで人間関係が楽に、そして豊かになっていくことでしょう。

C:期待受容タイプ

相手からの期待を好意的に受け止める力のあるタイプです。期待に応えられることに喜びを感じると共に、相手からしてもらえたことに対しても素直に感謝の気持ちを持つことが出来ます。無理のない範囲で、持ちつ持たれつの対等で友好的な人間関係(ギブアンドテイク)を形成することが出来て、人生を豊かに感じて過ごすことが出来ます。この様なタイプはマイナス思考に囚われることが少ないのでストレス要素もプラスに変換していく力も備わっているのではないでしょうか。

●自分の関係構築タイプの傾向がわかったら。

 自分の対人関係の構築タイプが分かってくると、何でいつも人間関係がうまくいかないのか、その原因が見えてきます。見えてくると対処の仕方を考えることも出来ます。そして、気づいたことを少しずつでもいいので、日々の人間関係の中で実行していくのです。それでうまくいけば成功体験として身体に刻まれ、意識せずともそれが自然になっていくのです。

 しかし、理屈では原因と対処法がわかっても、それがうまく機能しない場合もあります。例えば、Bの期待負荷タイプなどの場合は、幼少期に受けてきた体験が大きく影響している場合もあるのです。親が支配的だったり威圧的だったりすると、無意識レベルで期待に応えなくては、の指令が自分の中で発動されます。時にはそれが恐怖に感じる事もあります。それを回避するために、あえて人からの助けを断る、つまり甘えることを避けてしまうのです。

 また、一見、良好なタイプに伺えるCの期待受容タイプの中にも、親を喜ばせることで生きる方法を身につけてきた方などは、必要以上に相手の要求を満たそうとして、好意を得ようとして自分を苦しめてしまう事もあり得るのです。そのような方たちはどうすれば良いのでしょう?

●カウンセリングではおおもとのところからの、生きづらさからの回復を目指します。

 カウンセリングでは、交流分析スキーマ療法フォーカシング療法などを通して、幼少期における親との関係等とも向き合い、おおもとのところからの生きづらさからの回復を目指すことが出来ます。この取り組みは痛みを伴う事もあり(回復のための痛み)、専門職のカウンセラーと丁寧に時間をかけて根気よく取り組むことが求められます。性急に解決しようとすると無理がたたって逆効果になる場合があるからです。しかし、あきらめずに取り組んでいく限り、希望の光は必ずや差し込んでくることでしょう。もちろん今現在、生じている問題にも認知行動療法弁証法的行動療法などで取り組んでいくことができます。

 人間関係で生きづらさを感じている方や、カウンセリングにご関心を抱かれた方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にウェッピーカウンセリングルーム日野・東京までお問い合わせいただけたらと存じます。共に生きづらさからの回復の道を歩かせていただきました幸いです。あなたの心が少しでも癒されることを願って。