恋愛関係がうまくいかない。その陰に愛着スタイルの問題が・・解決の鍵とは?

母親との関係が、その後の人生にも影響を及ぼす。

●愛着とはどのようなものでしょう?

 まず、愛着の説明からしていきたいと思います。愛着(アタッチメント)とは、ジョン・ボウルビィによって提唱された理論で、主に乳幼児期にかけて母親との関係で形成される、他者との情緒的な結びつきのことを指します。母親との関係が安定していて、愛着が健全に築かれると自尊心が育まれ、お互いに慈しんだり、信頼し合ったりと安定した人間関係を構築することが出来ます。逆に母親との関係が不安定であったり、関係を十分に持つことが出来なかったりすると、愛着が不安定な状態で築かれてしまいます。その結果として、自尊心が育たずに他者に依存したり、またはコントロールしようとしたりして不安定な人間関係の中で苦しむことになりかねないのです。

 この愛着の問題は、成長してからも人生においてずっと影響し続ける事になるのです。

●愛着スタイルと愛着障害。

 上記に記した愛着理論から起きる障壁として、愛着スタイルと愛着障害に分別されます。愛着障害は診断基準に基づいた病理的状態であり、愛着スタイルは個人の特性や傾向として捉えられるものです。愛着障害に関しては他のページでもご紹介していますので、ここでは愛着スタイルに関して解説していきたいと思います。

●愛着スタイルとは?

 愛着スタイルは、ボウルビィの提唱した愛着理論に基づき、心理学者メアリー・エインズワースによって愛着のタイプを4つに分類したものです。以下にそのタイプを挙げます。

1.安定型:他者との関係において安心感や信頼感を得ることが出来る。相手との間に適切な境界線を保ちながらも親密な関係を築くことが出来る。ストレスにも柔軟に対処が出来る。要因として考えられるのは、養育者からの一貫して安定した愛情やケアが与えられたことなどが挙げられる。

2.回避型:他者との親密な関係を避ける傾向があり、独立を好む。感情的なつながりを避けて、関係が希薄化することがある。要因としては、養育者の無関心、関係性の希薄さ、自分の意思を尊重してもらえないなどの体験が影響している事が考えられる。

3.不安型:他者からの承認や愛情を過剰に求める傾向がある。不安感や不信感、疑心暗鬼に囚われやすく、一度得た関係に執着することがある。要因としては、養育者の精神状態が安定せずに、かわいがったと思ったら手の平を返したように突き放したりと、不安定で一貫性が感じられなかったことなどが考えられる。

4.混合型:他者との関係に安定した行動が見られずに、混乱を伴うケースがある。親密さを求めているが、関係を築くことへの恐怖など相反する感情の中で葛藤が生じる。要因としては養育者からの威圧的態度、虐待などの複雑性PTSDとなり得るような体験、または過度の過干渉・過保護などが考えられる。

 これらの愛着スタイルは様々な人間関係に影響を及ぼしますが、特に恋愛関係等において強く影響されると見られています。

●愛着スタイルから生じる苦しみからの解放の鍵は?

 もし、恋愛関係や人間関係に愛着スタイルの問題があるのではと感じられたら、まず必要なのはどのような愛着スタイルの傾向があるのかをご自身で認識することです。その上で、自分の思考やそれに伴う感情や行動のパターンを見ていった上で、他の視点の考えや行動はないかなどをカウンセラーと一緒に考えていきます。そして、実際にそれを行動に移すことを試みます。それを根気よく繰り返すことで徐々にではあっても、愛着スタイルから生じる思考・行動パターンに変化が訪れます。思考や行動パターンが変化することで、従来の感情の苦しみも変化していくのです。

 また、愛着の問題の根っこは主に乳児期から幼少期にかけての養育者との関係にあります。その傷は根が深く自分で感じているよりも傷も深い可能性があるので、より時間をかけて丁寧に向き合っていく必要があります。この部分を無理やり引きずり出すようなことをすると、さらに状態が悪化することもあり得るからです。カウンセラーはその部分にも注意をしながら、丁寧にクライエントに寄り添いながら支援していきます。

 そして変えられないものを変えようとせずに、ご自身の愛着の問題をあるがままに受け容れていくという方法もあります。受け容れるというのは、あきらめるとか我慢するというのではありません。愛着スタイルから生じる感情に同化するのではなく一緒にいてあげる、寄り添ってあげるというイメージなのです。これも一人で行うのではなく、最初はカウンセラーと一緒に取り組んでいきます。慣れてきたらセルフワークとして行ってみても良いでしょう。

●安心や安らぎを人に求めても、うまくはいかない。

 愛着スタイルに問題を抱えている方は、等しく不安感や所属感の無さ、虚無感などを多かれ少なかれ心の中に抱いています。その感情を埋めるために異性に依存することが多く、その結果として健全な恋愛関係を築くことが難しくなるのです。依存関係の恋愛はうまくいくことはまずありません。相手に愛着の問題が無ければ、やがて問題のある方の要求に耐えられなくなって去っていくだろうし、相手にも問題があればお互いに要求し合い、傷つけあうようになっていくでしょう。 

 では、どうすれば良いのでしょうか?理想を言えば、自分自身の中に安心できるものを見出すことが一番でしょう。見出すことが出来れば、たとえ一人でいても安心していられるようになるでしょう。しかし、言うは易くでこれはおいそれと出来るものでもありません。そこでまずは、カウンセラーとの間で信頼関係を築くことが出来たら、カウンセリングルームを安心・安全の場所、居場所と感じられるようになることから始めても良いのではないでしょうか。もちろん、カウンセラーもそのように努めます。そしてカウンセリングを継続していく中で、「何か今までと違っている、気持ちが楽になっている、自分の中に何か温かいものを感じている」などのような自分に気づかれるのではないでしょうか。

●一人で悩まずにまずはご相談を。

 今までに恋愛はしてきたがけど、いつもうまくいかずに破綻してしまう。そもそも恋愛自体が苦しい。それでも相手を求めずにいられない。恋愛関係に限らず人間関係そのものが苦しい。などと悩まれている方がいらっしゃいましたら、お一人で抱え込まずにまずはお気軽にウェッピーカウンセリングルーム日野・東京までご相談・お問合わせいただけたらと存じます。ここに挙げた愛着の問題以外にも見えない心の傷が影響しているかもしれません。そしてカウンセラーは治療者ではなく、苦しまれている方と共に考え、より良い生き方の道を歩いていただくための伴走者なのです。最後になりますが、あなたの心が少しでも癒されることを願っております。