アダルトチルドレンの苦しみをマズローの欲求階層説でひも解く。満たされない欲求とは?

安心・愛情・承認への渇望。

●マズローの欲求階層説とは?

 マズローの欲求階層説とは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した理論で人間の欲求を五つの階層に分けて表現したものです。五つに分けただけではなく、次の階層の欲求に移行するためには、その前の段階の階層の欲求が満たされなけらばならないという理論でもあるのです。以下にその階層の解説をいたします。

1.生理的欲求

食事・睡眠・呼吸・排泄・体温調整など生命を維持するための基本的欲求です。

2.安全の欲求

身体的な健康、経済的な安定など、安心して生活できる環境を求める欲求です。

3.社会的欲求

愛情や信頼関係など、良好かつ親密な人間関係を求める欲求です。

4.承認の欲求

自分で自分を認めたり、他者から認められたり、自分に対する価値を求める欲求です。

5.自己実現の欲求

自己の成長や探求、創造的な活動、人生の目的など、自分の可能性を追い求める欲求です。

 マズローは晩年に6番目の欲求として、「自己を超越した欲求」を提唱しました。これは、自分を越えた大いなる存在や、社会への貢献、手助けをしたいとの欲求です。自分の枠(欲)を越えた欲求と表現すると分かりやすいでしょうか。

 人間は1の階層欲求が満たされることによつて、2の階層、3の階層へとさらなる欲求が生じて、次の次元への欲求を満たすための行動に出るという概念です。

●アダルトチルドレンの方の満たされない欲求とは?

 アダルトチルドレンとは「機能不全家族の中で育った人たち」という概念です(疾患ではありません)。親が威圧的であったり、過度に過保護や過干渉であったり、両親間に諍いが絶えないような環境で育つと、子供は自分が守られているとか自分の考えを持って良いなどの自尊感情や安心感、信頼感を獲得することが出来ないままに大人へと成長します。子供時代に、「愛されたい、守られたい、認めてもらいたい」などの人間関係における基本的欲求が満たされないままに成長することになります。

 また、親がアルコール依存症で脅威となり得る存在であったり、暴力や暴言、ネグレクトや性的虐待などを受けたりすると、生存そのものが脅かされる環境で育つことになります。そうなると子供は自分の精神が崩壊しないように、自分を守るために無意識でその恐怖の感情を凍結してしまうのです。それをトラウマと言い、何かをきっかけに一気に溶解して恐怖の感情が鮮やかに蘇るのです。

 このようにアダルトチルドレンとして過酷な環境を生き抜いてきた人たちは、幼少期に本来は得るはずだった欲求がかなえられずに本人は気づかずとも、心と身体は常に愛情や安心、承認に対する渇望が生じているのです。

●この渇望はなかなか理解してもらえずに、本人も気づいていないことも多い。

 アダルトチルドレンの方の苦しみは、人に話しても「どこの家も同じようなもの」、「育ててもらっただけでも感謝したら」などと気持ちに寄り添ってもらえずに、逆に意見めいた返し方をされることもしばしばあります。そうなると、アダルトチルドレンの方は、「自分が考え過ぎなのかな?」、「自分が悪いのかな?」などと自分を責めたり、人に話すことをあきらめて自分の気持ちに蓋をされる方もいます。自分自身も過去に受けた体験を軽く見ようとして、心の傷に気づいていないことも多いのです。子供はどのような親でも基本的には悪く思いたくないように出来ているのです。親の否定は自分の否定にもつながっていくのですから。

●完全に一つの階層が満たされないと次に移れないのでしょうか?

 基本的には一つの階層が満たされることにより次の階層への欲求が生じると提唱されていますが、マズローは階層は横断されるとも表現しています。要するに5の階層段階にいると思っていたら、3や4の階層の欲求が生じる事もあり得るのです。それはある意味自然とも言えるのではないでしょうか。どの階層も完璧に満たされるという事は現実的には難しいでしょう。

●大切なのは、「自分が今どの階層の欲求段階にいるのか」に対する気づき。

 自分がなぜこんなに人間関係がうまくいかないのかわからずに、苦しまれている方も多いのではないでしょうか。大切なことは、自分が渇望している欲求に気づく事。分かって欲しいという気持ちなのか、認めてもらいたいのか、守ってもらいたいのか、見捨てないでもらいたいのか、愛して欲しいのか、それらは一つだけではなく重なっていることがほとんどと言ってよいかもしれません

●気づいたら立ち止まって丁寧に向き合うことが大切。

 自分がその欲求段階で、何に対して渇望しているのかに気づくことが出来たら、いったん立ち止まってその欲求と向き合う事が、より良い人生を歩んでいくためには必要な作業なのです。一度乗り越えたと思っていても、ぶり返すのが人生です。特に過去を振り返ることは時として苦痛を伴うかもしれませんが、そこを無かったことにしないで丁寧に向き合う事が、遠回りに見えても実は近道なのです。

●カウンセリングでは、気づきから対処法まで丁寧に取り組んでまいります。

 お一人で自分の苦しみの本質に気づくことは難しいのが現実です。どうしても主観から離れられないので、堂々巡りしてしまうのです。カウンセリングでは対話や心理療法のワークなどを通して、ご自身の内面に対して悩みの本質に近づいていくことを目指します。気づきを得ることが出来たら、その満たされない欲求に対してフォーカシング療法マインドフルネス療法スキーマ療法などを通して丁寧に癒していく作業に取り組んでいきます。解決の鍵はあせらず、あきらめず、丁寧に取り組んでいく事です。カウンセラーはそのための伴走者でもあるのです。

 自分もアダルトチルドレンかも?なんでこんなに生きづらいのか?等々、悩みや苦しみを感じている方やカウンセリングにご関心を抱かれましたら、ぜひお気軽にウェッピーカウンセリングルーム日野・東京までお問合わせいただけましたら幸いです。

 あなたの心が癒されますように。