カサンドラ症候群の悲しみとは?解決の鍵となるものは?

大切なのは発達障害への知識と相互理解。

カサンドラ症候群イメージイラスト

●カサンドラ症候群とは?

 カサンドラ症候群とは、一般的にはASDやADHDなどの発達障害傾向のある方をパートナーに持った方が、気持ちに寄り添ってもらえた感覚が得られない事により生じた苦しみや悩みの概念を指します。症候群と申しましても俗称で病名ではありませんが、この苦しみが続くと精神だけでなく身体的にも悪影響が生じてきて、健康的な生活を送る上での障壁となってしまいます。

 具体的な悩みとは、パートナーに精神的に寄り添ってもらえない、理解してもらえない、相談しても正論で返される、一緒にいても取り残された感じがする、寂しさ、虚しさ、孤独感、やがて怒りや恨みの感情に発展していく事などが挙げられます。

 カサンドラの由来は、ギリシャ神話に登場するトロイの王女カサンドラにあります。彼女は予知能力がありましたが、誰からも信用してもらえずに孤独感や孤立感、虚無感に苦しみました。このように理解してもらえない苦しみの象徴として彼女の名前が使われているのです。

●発達障害の方の特性とは?

 発達障害の特性にもいろいろな傾向はあるのですが、代表的なものとしてはASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠陥多動症)が存在します。ASDの特性としては、相手の気持ちが理解しずらい、先の見通しが立たないことへの不安、細かい説明を要する、言葉通りに受け取る、臨機応変な対処が苦手、などが挙げられます。ADHDの特性としては、周囲の情報を過度にキャッチするので注意力が散漫になったり、刺激に反応してとっさに行動を起こしたりします。休むことが苦手で常に何かしていたり、話始めるとなかなか止まらない傾向があったりもします。共通する傾向として、こだわりの強さや自分の考えを優性したい欲求の強さなどが挙げられます。

 以前は、ASDとADHDは違う障害と言われていたのですが、近年ではどちらかの傾向が強く表れることがあったとしても、重なる部分も大きいと言われるようになってきました。こられは脳の器質的な問題も含みますので、改善を求められても本人の特性として難しいものもあるのが実情です。また、周囲から見て違和感を感じたとしても本人にとっては自然な状態であり、捉え方によってはこれらの特性が強み(ストレングス)になったりもするのです。

 いずれにしてもカサンドラ症候群も含めて、人間関係はどちらか一方の問題だけではなくてお互いの問題でもあるのです。以下にそのことも含めて解説します。

●交際している時にはわからなかった?

 カサンドラ症候群は結婚されている方に多く見られる症状です(病名ではないのですがわかりやすくお伝えするために、あえて症状と表現します)。結婚に至る前の交際段階では相手の特性がわからなかったのかと、疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。以下にその理由を挙げてみたいと思います。

・生活を共にするなど、長期間にわたって一緒に過ごさない限り、寄り添ってもらえないなどの感覚に気づかないこともあります。逆に、自分の意見に自信があって相談したことに対して合理的な回答をもらえたり、行動力があって引っ張ってもらえる、頼りがいがあるなど魅力的に感じる事もあるでしょう。これは、アダルトチルドレンなど幼少期に抑圧された環境に育って自己肯定感が弱い方にとっては特に相手に対して感じる部分でもあるかもしれません。発達障害の傾向のある方から見ると、頼られて嬉しい、自分が守ってあげたくなるように感じるかもしれません。発達障害の傾向のある方とアダルトチルドレンの傾向のある方が惹かれ合うのは実際に珍しい事ではないのです。

・特に付き合い始めの頃などは気を使って相手にゆずるなど、こだわりなどの特性が抑えられている事も考えられます。好意を抱いている人に好かれたいと思う気持ちは、誰しもが持つ気持ちでそれはある意味自然な事でもあるのでしょう。

 このように、実際に生活を共にするまではお互いに良い点ばかり目が行って、その後、生じるかもしれない問題には気づかないことも多いのではないでしょうか。

●なぜ、お互いの問題なのか?

 交際期間を経て、実際に結婚して生活を共にするようになると、そうそう相手にも気を使ってばかりもいられません。特に発達障害の傾向のある人は無意識レベルでも仕事などにおいてストレスを受けている可能性もあるので、家庭ではリラックスしたい気持ちから発達障害の傾向特性が強く出る事も考えられます。一方、アダルトチルドレンの傾向のある方も、相手に対して頼りがいや安心感よりも、自分の気持ちを分かって欲しいという気持ちが増していって、不満やストレスが募るようになってくることが考えられます。このように段々とお互いが求めている事に対してずれが生じてくることが考えられるのです。これを対人関係療法では役割期待のずれと称します。

●問題の解決のためには?

 カサンドラ症候群としての問題の解決に必要なことは、まず相手の特性に対する理解です。この特性は変えることは難しく、それを求めていると段々と自分自身も追い込んでいく事になりかねません。

 ただし、結婚生活はお二人の相互関係の問題なので、どちらか一方だけが相手の事を理解しようしてもうまくはいきません。そこには不公平感や抑圧された感情が溜まり、いつか爆発することにもなり兼ねません。発達障害の傾向のあるパートナー自身にも自分の特性を理解した上で、相手の方の気持ちに寄り添う努力は必要です。そして、ご自身も自分の考え方や感じ方の傾向、パートナーに求めている事、その本質にあるものは何かなどを探っていく事が求められます。

 その上でお互いに話し合い、妥協点を見出していくのです。妥協と言うとマイナスに捉える方もいるかもしれませんが、思いやりとか譲り合う気持ちと捉えると良いのではないでしょうか。大切なのは、建設的に話し合って、お二人がなるべく気持ちよく協力し合って生活出来るように模索していく事です。模索するという過程自体がお二人の関係をより親密なものへと変えていくかもしれないのです。

 人間はみな長所と短所を併せ持っています。それはパートナーも同様であり、自分自身も同様なのです。良いところも悪いところも含めてその人であり自分なのです。それを受け容れるという考え方が何より大切なのではないでしょうか。

●カウンセリングの活用。

 カウンセリングでは、発達障害に対する知識の提供(心理教育)も行います。また、実際に軋轢が生じる状況に対して認知行動療法弁証法的行動療法対人関係療法などを通して、より多角的な視点での見方やより良い考え・行動なども一緒に考えていきます。また、交流分析によりご本人達の性格特性や幼少期に何かトラウマが生じていないか等、深く掘り下げて見ていくケースもあります。

 カウンセリング方法は、最初はお一人ずつ、タイミングを見てご夫婦同席してのカウンセリングなど、ご相談しながら進めてまいります。パートナーの方に問題意識が無い場合などは、悩んでいる方とだけのカウンセリングになりますが、それでもお一人で苦しんでいるよりは、はるかにお気持ち的に楽になるのではないでしょうか。

 カウンセリングの目的は、ご自身の人生を主体的に歩んでいけるようになることにあります。結果として、別々の道を歩むという答えが出ないとも限りません。それらも含めて、ご本人達にとってより自分らしい人生を歩まれるための手助けをさせていただくことがカウンセラーの務めでもあります。

 ここに挙げた内容に関して、また生きづらさを抱えていたり、カウンセリングにご興味をいだかれたりしましたら、ぜひお気軽にウェッピーカウンセリングルーム日野・東京までお問い合わせいただけましたら幸いです。

 あなたの心が癒されますように。