アダルトチルドレンの方へ。感情を解放するー感情処理法

感情処理法

 ●感情処理法とは

カウンセリングの領域は日々進化していて、悩みや苦しみを持つ人々を取り巻く状況もまた変化しています。それらに応じた新たな心理療法の開発が試みられています。苦しみの本質には、過去に受けてきた体験だけでなく、その人が本来持つパーソナリティ(性格)などの問題もあります。感情処理法は、感情の裏に隠れた禁止令や親から受けた信念などに関することもひも解きながら「今、ここ」の感情に焦点を当てて感情からの解放を試みるアプローチでもあると私は考えています。

 

再決断療法との関係性

先にも述べましたが、再決断療法の目的とするところは、頭では自分の考え方が過去のトラウマ体験などに囚われて、その結果人間関係をゆがめてしまうような行動に出てしまうことがわかっていても、なかなかそのスパイラルから抜け出せない人に対して、感情にも働きかけることにより思考や行動の変化を促すところにあります。感情そのものに働きかけることを目的としていないので、感情の囚われが強いタイプの方の苦しみに対しては再決断療法だけでの解決はなかなか難しいところがあります。一時よくなっても時間と共にまた従来の考え方がよみがえってきて苦しみが再燃する場合も考えられます。しかし、再決断療法は感情処理法と組み合わせることでより効果を発する療法とも考えられます。

 

●なぜ、感情を取り扱うことが必要か?

 例えば、認知行動療法では認知(思考)を変えることによって感情が変わり、行動も変わるという考え方をします。その結果、人間関係も改善して生きやすくなるという考え方です。しかし、私はどちらかというと思考と感情、行動は一つつながりで特に感情の占める割合が多いのではないかという考え方をとります。また、感情は怒りや悲しみなどシンプルなものと捉えがちですが色々な要素がそれこそ人の数だけ、様々に複雑に絡み合いながら構成されているものと捉えています。その感情はその人にしか分かるものではありません。また、その人自身にとっても不可解であり得る場合も多いでしょう。でも、感情を丁寧に感じて受け止めることは、その人自身が持つ苦しみからの解放にはとても大きな意味を持つと私はかんがえています。

 

●ラケット感情(にせもの感情)と健康な感情

ファニタ・イングリッシュは感情をラケット感情(にせもの感情)と健康な感情に仕分けしました。ラケット感情とは、例えばいじめや親から否定されるなどの体験から相手は悪意なく言っている事でも、馬鹿にされたなどと捉えてしまって過去の体験も踏まえて生まれる怒りの感情などのことを言います。健康な感情とは、たとえば純粋に自尊心を傷つけられたことによる悲しみや怒りの感情のことを指します。健康な人であれば誰でも、面と向かって馬鹿呼ばわりされたら傷つくし怒りますよね。健康な感情はそれがたとえ怒りであっても必要なものです。他には悲しみ・怖れ・喜び・嫌悪・寂しさの感情などがあります。どれも生きていくには必要なものです。例えば愛する人を失った場合などはしっかりと悲しむことでやがて感情が浄化されて「今、そして未来」へと歩き出すことができます。怖れ無くしては身を守ることや生活を守ることは出来ません。また、喜びの感情があるから新しいことにチャレンジしたり人と交流したいとも思える事でしょう。しかし、これがラケット感情にとって代られると不健康なものとなり人間関係を壊していくことにつながる場合があります。

 

●どのようにして感情処理を行うのか?

 例えば相手に対して怒りの感情が起きたとします。理由はどうであれ、まずはその感情をしっかり感じます。こんなことで怒っている自分ではダメだ、などと感情をごまかしたり、抑圧するのではなくその感情をしっかり受け止め表出してみましょう。かといって相手に対して怒鳴り散らしたり暴言をはいてよいというわけではありません。その場で相手に冷静に怒っていることを伝えられればよいのですが、難しい場合はいったんその場を離れて一人になった時に「ムカつく」などと言葉に表してみましょう。表出することによって感情が浄化される場合があります。次に自分はなぜそんなに怒りが生じたのか、またその感情がいまだに手放せないのはなぜなのか自分に問いかけてみましょう。相手の問題ではなく自分の問題として捉えるのです。そうすると、怒りの奥には自分が過去に否定されたり馬鹿にされた時の悲しみの感情が隠れていることに気が付くこともあります。それに気が付いたら、怒りの感情が起きた時のことを思い出して口に出してみましょう。例えば、「あなたにそのように言われて私は傷ついた。悲しい。」などと。そのようにして、自分にとっての本当の感情、健康的な感情に自ら気づいていくことによって、ラケット感情を手放していくことを目指します。カウンセリングの場では、起きた出来事を想起して今述べたことを疑似体験していくこともあります。

 

●感情を見る時の注意

 中には、とても深いトラウマ(PTSD)を抱えて感情と直面することが難しい方や、感情に意識を集中することで混乱をきたす精神疾患などをお持ちの方もいます。なので、感情処理法を試みる場合はカウンセラーなどの専門家とよく話し合って行う事をお勧めいたします。しかし、ラケット感情に囚われていると、感情が「今、ここ」で消化できずにずっと囚われ続けて苦しみ、妄想などが生じる場合もあります。感情を健康的なものへと置き換えていくことは、苦しみからの解放にとても役に立つと思われます。また、感情処理法は他の心理療法とも組み合わせながら行っていくことで、その効果がさらに増す心理療法であると私は考えています。